2011.06.12 (Sun)
はじめに
管理人・まじきみ(君嶋日向と同一人物)が好き勝手に書いているオリジナルBL小説サイトです。
○企業の事や市場の流れなど適当なので、そこらへんは適当に流してくださいね!
○☆は未完結。★は完結済み。♡は現在更新中。
○性描写を含む作品があるので、18歳未満禁止です!性描写は*で表示しています
○誤字脱字の指摘大歓迎です!コッソリと教えてくれたら嬉しいです^w^
チキンなため批判苦情などは一切受け付けていません´∞`
○ブログ内にある作品は著作権を放棄していません。無断転載や転用は固く禁じます。
LONG NOVEL
翻弄シリーズ ♡ヤクザ×リーマン
★翻弄される恋情
★翻弄される感情
秘するシリーズ ♡社長×秘書
★秘する心情
★秘する私情
不自然な恋情の交差♡リーマン×リーマン
★不自然な恋情の交差
純恋歌♡リーマン×リーマン
★純恋歌
★おまけ
不器用な恋だから♡先生×生徒
★不器用な恋だから
匂艶♡専務×秘書
☆匂艶―にじいろ―
MIDDLE NOVEL
クラスペディアの恋♡リーマン×リーマン
★クラスペディアの恋
SHORT NOVEL
短編集
★愛しているのは、アナタだけ
☆やさしいキモチ
☆Dancing
PLAN
企画集
★1万HIT 高槻×大窪
★2万&3万HIT シリアス短編集
★4万HIT 南条×早乙女
★5万HIT 高槻×大窪
★6万HIT 高槻×大窪
★7万HIT 南条×早乙女
★8万HIT 名取×増永
★9万HIT&10万HIT 『翻弄』『秘する』『不自然』カプ
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2009.11.24 (Tue)
匂艶―19―
『恋人でもできたのかい?』
しゃがれた久遠の声が鼓膜に入ってくる。
氷室は思わず眉を顰めた。
だがそれは久遠の声に不快を感じたわけではなく、耳にタコができるぐらい、何度もその台詞を聞いたからだった。
伊勢谷に弱みを握られてから、枕営業をしていなかった。いや、出来る状況ではなかった。
伊勢谷が色々と予定を入れてくるせいで、時間が合わず結局断ってしまうのだ。
枕営業は身体を提供する代わりに、契約や利益を提供者に与える又は融通を利かせるもので、秘書である氷室がする必要はないし、絶対しないといけないものでもない。ただSAKAEの為になるのならばしてきたこと。だがそれを南条に公言すると言われたら、それより伊勢谷を最優先にしなくてはいけない。そうせざるを得ない状態。
それにもし時間があったとしても、伊勢谷に連れ回されている所為で身体がクタクタな為結局断る羽目になる。
「そんな人いないですよ。仕事がたて込んでしまい忙しいんです」
『・・・・・そういうことにしておいてあげるよ』
氷室の言葉を信じていないような声音と、少し混じった寂寥に嫌悪する。
いつもは週に一度は必ず接待をしてきたが、今は全くない。
伊勢谷との間にも身体関係は存在しないので、約三週間近くセックスをしていない。社会人になって、こんなに禁欲的になったのは初めてかもしれない。しかし禁欲的になっても不思議なことに、欲求不満になるだとか、無性にしたくなるといった衝動などは全くなかった。
部屋に誘うのにセックスをしない上、休日になるとドライブや映画などデートのような奇妙でおかしなことを要求してくる為、最初は驚いたり不思議に思ったり煩わしく思ったりしたが、今はそれが新鮮で結構楽しんでいる自分がいた。
だがだからと言って、今までしてきた接待をずっとやめることは避けたかった。せっかく出来たカモたちを離すことはしたくない。
だが枕営業を嫌っている様子を見せる伊勢谷にしていることがバレたら、南条に公言するかもしれないという恐れがあった。それも避けたい。
『じゅあ、次はいつ会える?』
「そうですね・・・・・」
伊勢谷にバレたら大変だが、何度も誘ってくる久遠をこれ以上断ってはまた変に絡んできそうだ。自分をとても気に入っている久遠だから尚のこと。
(バレなければいいんだ)
「来週の金曜ならあいています」
伊勢谷にバレなければいいだけの話。バレたら公言されるかもしれないという恐怖観念にとらわれる前にバレないように工作を行えばいいのだ。そうすれば、一石二鳥。
来週の金曜は確か、伊勢谷は大事な取引先との会食だった。その日であれば久遠と会ってもバレないだろう。
『そうか、ではその日にしよう』
氷室の言葉を聞き、嬉々を孕ませた声音でそう答える。
そして『詳しい連絡は後ほどする』と言って、通話が切れた。
氷室は久遠の気持ちの悪い顔を思い出し、大きくため息をついた。携帯電話を内ポケットに入れて、仕事モードに切り替えた。
そして約束の日。
約束の場所に訪れた。
もちろん伊勢谷に久遠と会うことなど話していない。
■□■□
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しゃがれた久遠の声が鼓膜に入ってくる。
氷室は思わず眉を顰めた。
だがそれは久遠の声に不快を感じたわけではなく、耳にタコができるぐらい、何度もその台詞を聞いたからだった。
伊勢谷に弱みを握られてから、枕営業をしていなかった。いや、出来る状況ではなかった。
伊勢谷が色々と予定を入れてくるせいで、時間が合わず結局断ってしまうのだ。
枕営業は身体を提供する代わりに、契約や利益を提供者に与える又は融通を利かせるもので、秘書である氷室がする必要はないし、絶対しないといけないものでもない。ただSAKAEの為になるのならばしてきたこと。だがそれを南条に公言すると言われたら、それより伊勢谷を最優先にしなくてはいけない。そうせざるを得ない状態。
それにもし時間があったとしても、伊勢谷に連れ回されている所為で身体がクタクタな為結局断る羽目になる。
「そんな人いないですよ。仕事がたて込んでしまい忙しいんです」
『・・・・・そういうことにしておいてあげるよ』
氷室の言葉を信じていないような声音と、少し混じった寂寥に嫌悪する。
いつもは週に一度は必ず接待をしてきたが、今は全くない。
伊勢谷との間にも身体関係は存在しないので、約三週間近くセックスをしていない。社会人になって、こんなに禁欲的になったのは初めてかもしれない。しかし禁欲的になっても不思議なことに、欲求不満になるだとか、無性にしたくなるといった衝動などは全くなかった。
部屋に誘うのにセックスをしない上、休日になるとドライブや映画などデートのような奇妙でおかしなことを要求してくる為、最初は驚いたり不思議に思ったり煩わしく思ったりしたが、今はそれが新鮮で結構楽しんでいる自分がいた。
だがだからと言って、今までしてきた接待をずっとやめることは避けたかった。せっかく出来たカモたちを離すことはしたくない。
だが枕営業を嫌っている様子を見せる伊勢谷にしていることがバレたら、南条に公言するかもしれないという恐れがあった。それも避けたい。
『じゅあ、次はいつ会える?』
「そうですね・・・・・」
伊勢谷にバレたら大変だが、何度も誘ってくる久遠をこれ以上断ってはまた変に絡んできそうだ。自分をとても気に入っている久遠だから尚のこと。
(バレなければいいんだ)
「来週の金曜ならあいています」
伊勢谷にバレなければいいだけの話。バレたら公言されるかもしれないという恐怖観念にとらわれる前にバレないように工作を行えばいいのだ。そうすれば、一石二鳥。
来週の金曜は確か、伊勢谷は大事な取引先との会食だった。その日であれば久遠と会ってもバレないだろう。
『そうか、ではその日にしよう』
氷室の言葉を聞き、嬉々を孕ませた声音でそう答える。
そして『詳しい連絡は後ほどする』と言って、通話が切れた。
氷室は久遠の気持ちの悪い顔を思い出し、大きくため息をついた。携帯電話を内ポケットに入れて、仕事モードに切り替えた。
そして約束の日。
約束の場所に訪れた。
もちろん伊勢谷に久遠と会うことなど話していない。
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2009.11.22 (Sun)
匂艶―18―
海へ行った後、近くのデパートに行き適当に食事をした。そして伊勢谷が店内をフラフラと歩くので、氷室も仕方なくついていく。
仕事で頼まれた差し入れや土産の時にデパートを訪れることはあっても、私用で訪れることはあまりなかった。日用品など基本通信販売。(用事のついでに日用品など買うことはあっても、日用品のためにデパートを訪れることはなかった)
ざわついた人ごみが好きではないのもあるが、いちいち見て回るのも面倒。それ以前にざわざわ日用品のためにデパートへ行くのが面倒くさいというのがあった。
なので久々に用事なく訪れたのは久しぶりだった。
適当に店内を回っていると、
BGMや機会音がだんだん近くなることに気づき、音のほうへ視線を持っていくと、そこはゲームセンターだった。
ゲームセンターなど学生のときに友達の付き合いで数回行ったっきりで、自ら進んで行く場所ではなかった。
騒がしいBGMとけたたましい機会音に不快感を覚えた。
すると少し前で歩いていた伊勢谷が吸い込まれるように、ゲームセンターに入っていく。
「ゲームするんですか?」
氷室は驚き伊勢谷に問うと、伊勢谷は答えることなく店内を進んで行く。
三十の大人が一体何のゲームをしようとしているのか。本当にするつもりなのか。そんな疑問を抱きながら黙って伊勢谷についていく。
そしてめぼしいものが見つかったのか、伊勢谷は足を止めた。
「これをしよう」
そう言って、指をさしたのは、ガンシューティングゲームだった。
「本当にするんですか?」
氷室は一驚すると、伊勢谷は当然とでもいうかのように二ヤリを笑い、ゲーム画面に近づいた。そして画面の前に置いてあった銃を手に取ると、隣に並んでいた同じ機種のシューティングゲームのところから専用の銃と手に取り氷室に持つように促した。
「俺もですか?」
氷室は綺麗な柳眉を顰める。
ゲームなどやりたいなど思わない。だから遠慮したい。
氷室は首を振り拒否するが、伊勢谷は頑としてそれを認めなかったので、氷室はしぶしぶ銃を受け取った。
そして伊勢谷がお金を入れて、ゲームがスタートした。
二人一組でゾンビを倒して行き、ゾンビの親玉を倒したら終わりというシンプルなゲームであった。
だがそれでもいきなりゾンビが物陰から現れたり、何度撃っても生き返ってきたりして悪戦苦闘。その上銃の玉の補充の仕方も分からないし、銃も意外に重いので、大変だった。
だがそれと対照的に伊勢谷は涼しい顔をしながらゾンビを倒して行き、ゾンビに悪戦苦闘する氷室を時折手助けしていた。
伊勢谷に助けて貰うのは癪だが、それを省いたら意外に楽しかった。玉をゾンビに当てるのは案外、快感で癖になる。
最初嫌々のゲームだったが、最後には結構ノリノリだった。
そしてゲームがクリアして、ゾンビを倒したスコアが出てくると伊勢谷の半分もいかないぐらいの数だった。
それを見て伊勢谷は喉を鳴らし笑った。
「下手くそだな」
「ルールがわからなかっただけです」
氷室は間髪容れずに言い返す。
「じゃあ、もう一度やろう」
すると伊勢谷がニヤリと笑い、挑戦を吹っかけてくる。
その表情に氷室の勝負心に火がつき、氷室は案外あっさりと勝負に乗った。
普段ならそんな子供っぽいことなどしないが、何故か今日はその挑戦に乗ってしまった。
そして再びゲームが始まった。氷室は意気込み銃を握った。
そしてゲームを終え、スコアの表示を見ると、伊勢谷の半分であった。
「ほら、君は下手くそなんだ」
伊勢谷は楽しそうに笑う。その表情はとても得意げに見え、腹が立った。
「違います。もう一度しましょう」
自然と再戦を申し込む言葉が出た。一度発火した勝負心はなかなか消えなかった。
何事にも淡白でクールな人間だと思っていたのに、こんな一面を持っているのだと気づき驚いた。
そして再びゲームを始めた。
これで二度目のゲームなので、ある程度は慣れてきて、ゾンビも的確に狙えるようになってきた。だがそれ以上に伊勢谷は上手で、無駄玉なくゾンビを狙い撃つ。そんな伊勢谷にむかつき伊勢谷が使っていたキャラに向かって玉を撃つ。
「お、おい、味方を撃つ奴があるか!」
伊勢谷は驚き、氷室を注意する。
味方に撃ってもダメージはないものの、明らかに邪魔。それを知りながらも氷室は時折、伊勢谷に向かってわざと玉を撃った。
三十の男と三十近い男が騒ぎ、大人気なくガンシューティングゲームで遊んでいるのは異様な感じだと思いながらも、そんなことどうでもよくなるぐらいガンシューティングゲームが楽しく思えた。子供だと思いながらも、何度も伊勢谷に勝つためにゲームをしていた。
■□■□
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仕事で頼まれた差し入れや土産の時にデパートを訪れることはあっても、私用で訪れることはあまりなかった。日用品など基本通信販売。(用事のついでに日用品など買うことはあっても、日用品のためにデパートを訪れることはなかった)
ざわついた人ごみが好きではないのもあるが、いちいち見て回るのも面倒。それ以前にざわざわ日用品のためにデパートへ行くのが面倒くさいというのがあった。
なので久々に用事なく訪れたのは久しぶりだった。
適当に店内を回っていると、
BGMや機会音がだんだん近くなることに気づき、音のほうへ視線を持っていくと、そこはゲームセンターだった。
ゲームセンターなど学生のときに友達の付き合いで数回行ったっきりで、自ら進んで行く場所ではなかった。
騒がしいBGMとけたたましい機会音に不快感を覚えた。
すると少し前で歩いていた伊勢谷が吸い込まれるように、ゲームセンターに入っていく。
「ゲームするんですか?」
氷室は驚き伊勢谷に問うと、伊勢谷は答えることなく店内を進んで行く。
三十の大人が一体何のゲームをしようとしているのか。本当にするつもりなのか。そんな疑問を抱きながら黙って伊勢谷についていく。
そしてめぼしいものが見つかったのか、伊勢谷は足を止めた。
「これをしよう」
そう言って、指をさしたのは、ガンシューティングゲームだった。
「本当にするんですか?」
氷室は一驚すると、伊勢谷は当然とでもいうかのように二ヤリを笑い、ゲーム画面に近づいた。そして画面の前に置いてあった銃を手に取ると、隣に並んでいた同じ機種のシューティングゲームのところから専用の銃と手に取り氷室に持つように促した。
「俺もですか?」
氷室は綺麗な柳眉を顰める。
ゲームなどやりたいなど思わない。だから遠慮したい。
氷室は首を振り拒否するが、伊勢谷は頑としてそれを認めなかったので、氷室はしぶしぶ銃を受け取った。
そして伊勢谷がお金を入れて、ゲームがスタートした。
二人一組でゾンビを倒して行き、ゾンビの親玉を倒したら終わりというシンプルなゲームであった。
だがそれでもいきなりゾンビが物陰から現れたり、何度撃っても生き返ってきたりして悪戦苦闘。その上銃の玉の補充の仕方も分からないし、銃も意外に重いので、大変だった。
だがそれと対照的に伊勢谷は涼しい顔をしながらゾンビを倒して行き、ゾンビに悪戦苦闘する氷室を時折手助けしていた。
伊勢谷に助けて貰うのは癪だが、それを省いたら意外に楽しかった。玉をゾンビに当てるのは案外、快感で癖になる。
最初嫌々のゲームだったが、最後には結構ノリノリだった。
そしてゲームがクリアして、ゾンビを倒したスコアが出てくると伊勢谷の半分もいかないぐらいの数だった。
それを見て伊勢谷は喉を鳴らし笑った。
「下手くそだな」
「ルールがわからなかっただけです」
氷室は間髪容れずに言い返す。
「じゃあ、もう一度やろう」
すると伊勢谷がニヤリと笑い、挑戦を吹っかけてくる。
その表情に氷室の勝負心に火がつき、氷室は案外あっさりと勝負に乗った。
普段ならそんな子供っぽいことなどしないが、何故か今日はその挑戦に乗ってしまった。
そして再びゲームが始まった。氷室は意気込み銃を握った。
そしてゲームを終え、スコアの表示を見ると、伊勢谷の半分であった。
「ほら、君は下手くそなんだ」
伊勢谷は楽しそうに笑う。その表情はとても得意げに見え、腹が立った。
「違います。もう一度しましょう」
自然と再戦を申し込む言葉が出た。一度発火した勝負心はなかなか消えなかった。
何事にも淡白でクールな人間だと思っていたのに、こんな一面を持っているのだと気づき驚いた。
そして再びゲームを始めた。
これで二度目のゲームなので、ある程度は慣れてきて、ゾンビも的確に狙えるようになってきた。だがそれ以上に伊勢谷は上手で、無駄玉なくゾンビを狙い撃つ。そんな伊勢谷にむかつき伊勢谷が使っていたキャラに向かって玉を撃つ。
「お、おい、味方を撃つ奴があるか!」
伊勢谷は驚き、氷室を注意する。
味方に撃ってもダメージはないものの、明らかに邪魔。それを知りながらも氷室は時折、伊勢谷に向かってわざと玉を撃った。
三十の男と三十近い男が騒ぎ、大人気なくガンシューティングゲームで遊んでいるのは異様な感じだと思いながらも、そんなことどうでもよくなるぐらいガンシューティングゲームが楽しく思えた。子供だと思いながらも、何度も伊勢谷に勝つためにゲームをしていた。
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2009.11.19 (Thu)
匂艶―17―
ベッドで一人寝ろだとか、一緒に朝食を食べろ、などという意味の分からない脅しをしてくることなどないと思っていた。
なのに、あのおかしな夜から伊勢谷は異常なぐらい一緒にいるように強制した。
仕事が終わり時間があれば食事をしたり、伊勢谷の部屋によばれたりした。だが部屋によばれてもセックスはすることはなかった。一体何が目的で、何がしたいのか分からない。
それならまだマシだった―――――・・・・。
(何故昼間っから伊勢谷とドライブしに行かなくてはいけないのだ・・・・)
氷室は伊勢谷が運転する車の助手席に座り、窓を眺めていた。
窓から入ってくる新鮮な空気が頬を掠め、時折しおっぽい香りが鼻腔を擽る。だがそんな風を感じても爽やかな気分になるどころか、逆に憂鬱になる。
伊勢谷は平日の夜だけではなく、休日になればドライブや美術館巡りや、映画館など様々なところへ無理矢理連れて行った。
折角の休日が朝から潰される、プライベートでも上司である伊勢谷と一緒にいないといけないのか。気が滅入る。
脅しのネタを握らされていなければ、こんな男と絶対に折角の休日の朝に外に出ていない。今頃は心地よいベッドで気持ちよく昼までゆっくり寝ている。あれがセックスの次に好きな事だったのに。その時間を返せと言いたくなる。
それでものこのこと伊勢谷の言うとおりにしてしまうのは、南条だけには公言してほしくないから。
身体だけを捧げて口止めでいれば一番手っ取り早くて簡単なのに、何故平日の夜や休日を伊勢谷に奪われ一緒に出かけなくてはいけないのか。七面倒くさい。
低血圧で朝が苦手な氷室にとって車の窓から差し込む眩しい日差しや、爽やかな風全てが煩わしい。
(面倒くさ)
心中でため息をつきながら、瞼を閉じた。
そして車が止まったことに気づき、目を開けると、そこは海だった。
「ついたぞ」
そう言って伊勢谷は外に出るものだから、氷室も仕方がなく車内から出た。
どこまでも続く真っ青な海は、太陽の陽射しに反射しキラキラとしていた。穏やかに波立ち、柔らかくザブーンと音を立てる。そして細かな砂浜には小さな貝殻や生き物がいた。
休日の朝のため、子供連れの家族や中高生ぐらいの子供たちがちらほら海で泳いだり、砂浜で遊んだりしていた。
太陽の眩しい陽射しに目を細め、手で陽射しをさける。
海を目の前にするのは何十年ぶりだった。最後に来たのは高校生の夏休みだった気がする。それ以降海に行く機会もないし、あったとしても面倒で行かなかった。
柔らかい風がしおの香りを運び、遠くで人の声が聞こえる。
少し前にいた伊勢谷は黙って海を見つめていた。
「どうして休日に連れ出したりするんですか?」
氷室は伊勢谷の後ろ姿を見ながら、大きなため息をついた。
「しかも海だなんて・・・・」
嫌悪と不快をあらわにした雰囲気を醸し出しながら、言葉を発した。
すると伊勢谷はゆっくりと振りかえり、手で陽射しをさえぎる氷室の姿を見て形のいい唇を緩めた。
「君は日の光を浴びたほうがいい」
そして小馬鹿にしたような笑みを浮かべ、そう言った。
いつもならそんな余計なお節介に毒づくはずだったが、伊勢谷の瞳がどこか戯れるような、茶目っ気の色を孕み、雰囲気も和らいだから嫌悪や毒づくことも忘れてしまった。
あの夜以降、あまり胡散臭くておちゃらけた雰囲気が消えていた。
だが先程の笑みから見えたふざけた感じが垣間見え、ノスタルジアを覚えたが、それも伊勢谷の言葉に払拭された。
「不健康だから」
「不健康?どこがですが。俺はいたって健康です」
氷室は伊勢谷の言葉に張り合った。
そんな氷室など気にする様子もなかった。
「それにしても、君は本当に海が似合わない」
そして改めて氷室の姿を見ると、おかしそうに口元を緩めた。
「それはすいませんでした。でしたら俺なんて誘わなければ良かったんですよ」
伊勢谷の言葉と笑みに苛立ち冷たく言葉を返す。
そして少し会話をしながらただ海を眺めた。
久しぶりに柔らかい雰囲気や会話に何故か安堵を覚えた。
それから少して、海を後にした。
穏やかで静かな波と騒ぐ人の声が耳に残り、太陽の陽射しが皮膚にしみ込んでいるようで車にいてもどこか海の面影を感じていた。
少しばかり、胸が波打った、気がした。
■□■□
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なのに、あのおかしな夜から伊勢谷は異常なぐらい一緒にいるように強制した。
仕事が終わり時間があれば食事をしたり、伊勢谷の部屋によばれたりした。だが部屋によばれてもセックスはすることはなかった。一体何が目的で、何がしたいのか分からない。
それならまだマシだった―――――・・・・。
(何故昼間っから伊勢谷とドライブしに行かなくてはいけないのだ・・・・)
氷室は伊勢谷が運転する車の助手席に座り、窓を眺めていた。
窓から入ってくる新鮮な空気が頬を掠め、時折しおっぽい香りが鼻腔を擽る。だがそんな風を感じても爽やかな気分になるどころか、逆に憂鬱になる。
伊勢谷は平日の夜だけではなく、休日になればドライブや美術館巡りや、映画館など様々なところへ無理矢理連れて行った。
折角の休日が朝から潰される、プライベートでも上司である伊勢谷と一緒にいないといけないのか。気が滅入る。
脅しのネタを握らされていなければ、こんな男と絶対に折角の休日の朝に外に出ていない。今頃は心地よいベッドで気持ちよく昼までゆっくり寝ている。あれがセックスの次に好きな事だったのに。その時間を返せと言いたくなる。
それでものこのこと伊勢谷の言うとおりにしてしまうのは、南条だけには公言してほしくないから。
身体だけを捧げて口止めでいれば一番手っ取り早くて簡単なのに、何故平日の夜や休日を伊勢谷に奪われ一緒に出かけなくてはいけないのか。七面倒くさい。
低血圧で朝が苦手な氷室にとって車の窓から差し込む眩しい日差しや、爽やかな風全てが煩わしい。
(面倒くさ)
心中でため息をつきながら、瞼を閉じた。
そして車が止まったことに気づき、目を開けると、そこは海だった。
「ついたぞ」
そう言って伊勢谷は外に出るものだから、氷室も仕方がなく車内から出た。
どこまでも続く真っ青な海は、太陽の陽射しに反射しキラキラとしていた。穏やかに波立ち、柔らかくザブーンと音を立てる。そして細かな砂浜には小さな貝殻や生き物がいた。
休日の朝のため、子供連れの家族や中高生ぐらいの子供たちがちらほら海で泳いだり、砂浜で遊んだりしていた。
太陽の眩しい陽射しに目を細め、手で陽射しをさける。
海を目の前にするのは何十年ぶりだった。最後に来たのは高校生の夏休みだった気がする。それ以降海に行く機会もないし、あったとしても面倒で行かなかった。
柔らかい風がしおの香りを運び、遠くで人の声が聞こえる。
少し前にいた伊勢谷は黙って海を見つめていた。
「どうして休日に連れ出したりするんですか?」
氷室は伊勢谷の後ろ姿を見ながら、大きなため息をついた。
「しかも海だなんて・・・・」
嫌悪と不快をあらわにした雰囲気を醸し出しながら、言葉を発した。
すると伊勢谷はゆっくりと振りかえり、手で陽射しをさえぎる氷室の姿を見て形のいい唇を緩めた。
「君は日の光を浴びたほうがいい」
そして小馬鹿にしたような笑みを浮かべ、そう言った。
いつもならそんな余計なお節介に毒づくはずだったが、伊勢谷の瞳がどこか戯れるような、茶目っ気の色を孕み、雰囲気も和らいだから嫌悪や毒づくことも忘れてしまった。
あの夜以降、あまり胡散臭くておちゃらけた雰囲気が消えていた。
だが先程の笑みから見えたふざけた感じが垣間見え、ノスタルジアを覚えたが、それも伊勢谷の言葉に払拭された。
「不健康だから」
「不健康?どこがですが。俺はいたって健康です」
氷室は伊勢谷の言葉に張り合った。
そんな氷室など気にする様子もなかった。
「それにしても、君は本当に海が似合わない」
そして改めて氷室の姿を見ると、おかしそうに口元を緩めた。
「それはすいませんでした。でしたら俺なんて誘わなければ良かったんですよ」
伊勢谷の言葉と笑みに苛立ち冷たく言葉を返す。
そして少し会話をしながらただ海を眺めた。
久しぶりに柔らかい雰囲気や会話に何故か安堵を覚えた。
それから少して、海を後にした。
穏やかで静かな波と騒ぐ人の声が耳に残り、太陽の陽射しが皮膚にしみ込んでいるようで車にいてもどこか海の面影を感じていた。
少しばかり、胸が波打った、気がした。
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2009.11.17 (Tue)
匂艶―16―
「起きたか」
リビングダイニングにある木製の椅子に座りコーヒーを飲みながら新聞を読んでいた伊勢谷が、氷室に気づき声をかけた。
結局伊勢谷のベッドを借りて寝た。寝るつもりはなかったが、久遠との情事に疲れていたようでベッドに寝転ぶと案外あっさり寝てしまった。
そして目を覚まし、リビングへ行くと伊勢谷はラフな格好で座っていた。
リビングダイニングの窓は大きく太陽の光が通常より差し込んでとても明るかった。その上、カーテンもしていないのでより、明るくリビングを照らす。低血圧の氷室にはとてつもなく不快で、最悪だった。その上昨日のやりとりなどなかったかのような伊勢谷の表情に、より不快を感じた。
「朝食を食べに行くから、着替えろ」
その上、氷室の感情を逆撫でするような命令口調に思わず「はぁ?」と不快と冷たさを露わにした言葉を出しそうになったが、それは理性で止めた。
「着替えはありません。その前に、帰りたいのですが」
「着替えはクローゼットから勝手に漁ればいい」
新聞に目を通しながら氷室の意見など全く無視した台詞を吐く伊勢谷に、イラッとするが、表情には出さなかった。
帰りたいんですけど、というか帰ります
そう言って踵を返そうとした時、
「社長に言われたくなければ、着替えろ」
と、脅してくるものだから、表面では無表情を取り繕ったが心中では憤っていた。
枕営業のことを社長に言われるのは嫌だが、だからと言って下手には出たくない。それに迷惑をかけていないはずの伊勢谷に脅されるのも癪だ。
「別に外に出なくてもいいでしょ。それに俺は朝食を食べる習慣はありません」
強気に言葉を返すと、伊勢谷は無表情の顔でじっと氷室を見つめ黙る。無言の圧力。その瞳は、「社長に言われたくなければさっさとしろ」と訴えているようだった。
「・・・・・はいはい、わかりました」
それに折れ、結局伊勢谷の言う事を受け入れることにした。
そして渋々クローゼットからワイシャツとジーパンを借りて、伊勢谷の部屋を後にした。
少し歩いたところにログハウスのような外観の小さな喫茶店があり、そこで入った。
温かみのある木目の床と壁にマッチした真っ黒い木目の椅子と机が並び、どこかゆったりとした落ち着く空間が流れていた。
伊勢谷はどこか慣れたような感じでそこに入ると、適当に座った。氷室もため息をつきながら座る。
「朝食はいりませんよ」
「君は食べたほうがいい」
「だから俺は食べる習慣がないんです」
そう言っているのに伊勢谷は聞く耳持たず、メニューを見ないで伊勢谷は勝手にモーニングセットを注文した。
コーヒーだけ注文しようとしたのに、勝手にメニューを決め無理やり朝食を食べさせようとする意味の分からないお節介に焦れながらも、言葉を発することが面倒でやめた。
そして注文した食事がテーブルに並ぶ。こんがりと焼けたトーストと、みずみずしいサラダと、香ばしいコーヒー。
朝食を食べる習慣のない氷室にとって、朝こんなに食事が並んでいるのを見るだけでも
億劫になり、胃がムカムカしてくる。その上伊勢谷と一緒に朝食をとっているということが氷室をこの上なく不快にさせる。
トーストを口にしながら、ちらっと目の前にいる男を見る。
伊勢谷は無言で朝食を食べている。
顔立ちは端整で見た目はとても大人っぽくミステリアスであるが、話すととても爽やかでふざけた雰囲気があるためそれをあまり感じさせない。だが今は普段の爽やかでふざけた雰囲気などない、年相応の大人な雰囲気を醸し出していた。
(何がしたいんだか・・・・・)
伊勢谷が一体何を考え、ここにつれてきて一人で寝ろなんて言ったのか分からないが、とりあえずこんなことはもうないだろう。意味の分からない行動はもうないと思っていたのに、・・・何故上司である伊勢谷と揃って朝食をとらなくてはならないのか。
「・・・・・・・・」
本当にわからない。
でもまぁ、これ以上に意味のわからないことを要求してはこないだろうと思った。
二人は何も話さないまま、朝食を食べた。齧ったトーストは、外はかりっとして中はふっくらと柔らかく美味しいのだろうが、朝食を食べることがない氷室にとってそう感じることが出来なかった。
(さっさと食べて帰ろう)
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リビングダイニングにある木製の椅子に座りコーヒーを飲みながら新聞を読んでいた伊勢谷が、氷室に気づき声をかけた。
結局伊勢谷のベッドを借りて寝た。寝るつもりはなかったが、久遠との情事に疲れていたようでベッドに寝転ぶと案外あっさり寝てしまった。
そして目を覚まし、リビングへ行くと伊勢谷はラフな格好で座っていた。
リビングダイニングの窓は大きく太陽の光が通常より差し込んでとても明るかった。その上、カーテンもしていないのでより、明るくリビングを照らす。低血圧の氷室にはとてつもなく不快で、最悪だった。その上昨日のやりとりなどなかったかのような伊勢谷の表情に、より不快を感じた。
「朝食を食べに行くから、着替えろ」
その上、氷室の感情を逆撫でするような命令口調に思わず「はぁ?」と不快と冷たさを露わにした言葉を出しそうになったが、それは理性で止めた。
「着替えはありません。その前に、帰りたいのですが」
「着替えはクローゼットから勝手に漁ればいい」
新聞に目を通しながら氷室の意見など全く無視した台詞を吐く伊勢谷に、イラッとするが、表情には出さなかった。
帰りたいんですけど、というか帰ります
そう言って踵を返そうとした時、
「社長に言われたくなければ、着替えろ」
と、脅してくるものだから、表面では無表情を取り繕ったが心中では憤っていた。
枕営業のことを社長に言われるのは嫌だが、だからと言って下手には出たくない。それに迷惑をかけていないはずの伊勢谷に脅されるのも癪だ。
「別に外に出なくてもいいでしょ。それに俺は朝食を食べる習慣はありません」
強気に言葉を返すと、伊勢谷は無表情の顔でじっと氷室を見つめ黙る。無言の圧力。その瞳は、「社長に言われたくなければさっさとしろ」と訴えているようだった。
「・・・・・はいはい、わかりました」
それに折れ、結局伊勢谷の言う事を受け入れることにした。
そして渋々クローゼットからワイシャツとジーパンを借りて、伊勢谷の部屋を後にした。
少し歩いたところにログハウスのような外観の小さな喫茶店があり、そこで入った。
温かみのある木目の床と壁にマッチした真っ黒い木目の椅子と机が並び、どこかゆったりとした落ち着く空間が流れていた。
伊勢谷はどこか慣れたような感じでそこに入ると、適当に座った。氷室もため息をつきながら座る。
「朝食はいりませんよ」
「君は食べたほうがいい」
「だから俺は食べる習慣がないんです」
そう言っているのに伊勢谷は聞く耳持たず、メニューを見ないで伊勢谷は勝手にモーニングセットを注文した。
コーヒーだけ注文しようとしたのに、勝手にメニューを決め無理やり朝食を食べさせようとする意味の分からないお節介に焦れながらも、言葉を発することが面倒でやめた。
そして注文した食事がテーブルに並ぶ。こんがりと焼けたトーストと、みずみずしいサラダと、香ばしいコーヒー。
朝食を食べる習慣のない氷室にとって、朝こんなに食事が並んでいるのを見るだけでも
億劫になり、胃がムカムカしてくる。その上伊勢谷と一緒に朝食をとっているということが氷室をこの上なく不快にさせる。
トーストを口にしながら、ちらっと目の前にいる男を見る。
伊勢谷は無言で朝食を食べている。
顔立ちは端整で見た目はとても大人っぽくミステリアスであるが、話すととても爽やかでふざけた雰囲気があるためそれをあまり感じさせない。だが今は普段の爽やかでふざけた雰囲気などない、年相応の大人な雰囲気を醸し出していた。
(何がしたいんだか・・・・・)
伊勢谷が一体何を考え、ここにつれてきて一人で寝ろなんて言ったのか分からないが、とりあえずこんなことはもうないだろう。意味の分からない行動はもうないと思っていたのに、・・・何故上司である伊勢谷と揃って朝食をとらなくてはならないのか。
「・・・・・・・・」
本当にわからない。
でもまぁ、これ以上に意味のわからないことを要求してはこないだろうと思った。
二人は何も話さないまま、朝食を食べた。齧ったトーストは、外はかりっとして中はふっくらと柔らかく美味しいのだろうが、朝食を食べることがない氷室にとってそう感じることが出来なかった。
(さっさと食べて帰ろう)
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