2011.06.12 (Sun)
はじめに
管理人・まじきみ(君嶋日向と同一人物)が好き勝手に書いているオリジナルBL小説サイトです。
○企業の事や市場の流れなど適当なので、そこらへんは適当に流してくださいね!
○☆は未完結。★は完結済み。♡は現在更新中。
○性描写を含む作品があるので、18歳未満禁止です!性描写は*で表示しています
○誤字脱字の指摘大歓迎です!コッソリと教えてくれたら嬉しいです^w^
チキンなため批判苦情などは一切受け付けていません´∞`
○ブログ内にある作品は著作権を放棄していません。無断転載や転用は固く禁じます。
LONG NOVEL
翻弄シリーズ ♡ヤクザ×リーマン
★翻弄される恋情
★翻弄される感情
秘するシリーズ ♡社長×秘書
★秘する心情
★秘する私情
不自然な恋情の交差♡リーマン×リーマン
★不自然な恋情の交差
純恋歌♡リーマン×リーマン
★純恋歌
★おまけ
不器用な恋だから♡先生×生徒
★不器用な恋だから
匂艶♡専務×秘書
☆匂艶―にじいろ―
MIDDLE NOVEL
クラスペディアの恋♡リーマン×リーマン
★クラスペディアの恋
SHORT NOVEL
短編集
★愛しているのは、アナタだけ
☆やさしいキモチ
☆Dancing
PLAN
企画集
★1万HIT 高槻×大窪
★2万&3万HIT シリアス短編集
★4万HIT 南条×早乙女
★5万HIT 高槻×大窪
★6万HIT 高槻×大窪
★7万HIT 南条×早乙女
★8万HIT 名取×増永
★9万HIT&10万HIT 『翻弄』『秘する』『不自然』カプ
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2009.11.05 (Thu)
匂艶―11―
2009.11.03 (Tue)
匂艶―10―
着信主は枕営業をしている相手だった。「今から会えないだろうか」という唐突の内容。そんな突然の内容を了承すること出来るはずもなく、当然のように断った。そのやり取りは五分もしなかった。
だがすぐにあの場に戻るのはせず、氷室は手洗い場に向かった。
美しい光沢のグラニットブラックの大理石で出来た床にマッチする淡い色合いのブラウンの壁にはひし形の模様がうっすらと入っていた。ボールの形をしたベイシックホワイトの大理石で出来た洗面台。
やはり手洗い場もレストランの内装同様美しく目を奪われるデザインだったが、今の氷室にはどうでも良かった。
氷室は汚くもない手を洗った。
(・・・・・・・・)
胸に重い錘があるようで、すっきりとしない。
南条の言葉や南条の秘書である早乙女のことを思い出すと、胸がわさわさと騒ぎ出す。そんな自分に苛立つ。
そしてふと、目の前に指紋一つない綺麗な鏡に目を向けると、困惑と焦燥をない交ぜにした色を宿した瞳が映っていた。そんな自分に嫌悪する。
(馬鹿馬鹿しい)
こんな感情を抱くなんて、まるで子供だ。
もう終わったことなのに、すんだことなのにくよくよと悩み、恨めしく思っているなんて。
本当は南条の傍で、南条を支えたかった。
氷室の父・南条一彦は、氷室が物心つく頃に病で突然亡くなった。
だがSAKAEモーターの前社長・南条宏道の息子で、SAKAEで働いていた為、貯金はあった。だがだからと言って働かなくてもいいというわけでもない。
母は父の変わりに働いた。しかし、父の突然の死で母は心的に余裕がなく弱くなっていた。そして父の死後半年もしないうちに、母は倒れてしまった。命に別状はなかったが、家計は苦しかった。
そんな氷室たちをサポートしてくれたのが、一彦の父・宏道であった。
金銭的にも、心的にもサポートをしてくれた。母が療養しているため、本家に連れてきて可愛がられて育ててくれた。
その本家には現社長であり、従兄弟同士の南条宏隆もいた。南条の父もすでに他界していた所為もあってか、南条は氷室の面倒をよく見てくれた。
父の死後を思い出し泣いた夜も優しく宥め、一緒に寝てくれた。父兄参観の紙が配られ父がいないことに直面し悲しくなっていた時も慰撫してくれ、父兄参観の時南条が参加してくれた。
そんな優しく温かい南条を兄のように慕っていた。
大学まで金銭的サポートをしてくれた南条家には感謝していた。
南条家の人たちのために何か恩返ししたいと思い、なにか出来ないかと考えた結果、SAKAEモーターに入社した。
そして兄のように慕っている南条の傍で仕事を支えたいと思い、秘書になることにきめた。だからと言ってすぐに南条のサポートが出来るなど思っていなかったが、機会があれば、時間が経てば南条は幹部になる、いや社長になるかもしれない、そう思っていたから、秘書になった。
だがそんな思い空しく、社長の南条を近くで支えているのが秘書課と畑違いの営業課だった早乙女優。
それを聞いて、何かが崩れたような音が聞こえたのを今でも覚えている。
南条が社長になるために色々と奔走しているのは何となく知っていたし、南条が社長になると聞いて、間違いなく自分が秘書になるだろうと思っていた。
なのに、畑違いの営業課を秘書に。それが信じられなかった。
百歩譲って営業課の後輩で信用していたからと言っても、仕事の内容が全く違う営業課の人間用を起用するのは間違っている。
それでも、もう決まってしまったのだから仕方がなかった。
そう思っても、やはり近くで南条をサポートしたかった。
南条の傍にいなくても、SAKAEで働けばSAKAEのためになると分かっていても、南条の秘書として働きたかった。
その感情が、先程の南条の言葉を聞いてふつふつとわいてきた。
秘書課にいる早乙女のことを思い出すと、危うい衝動が身を焦がす。
氷室は大きなため息をついて、気持ちを落ち着かせる。
(もう終わったことだ。別にうだうだ考えることでもないだろ)
そう自分に言い聞かせるが、すっきりしない。
それでも必死に心に蓋をして、平然を繕う。
鏡に映る己の顔は普段と変らないクールな表情だった。
それを確認して、手洗い場を出て、二人がいる席に向かって歩いた。
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だがすぐにあの場に戻るのはせず、氷室は手洗い場に向かった。
美しい光沢のグラニットブラックの大理石で出来た床にマッチする淡い色合いのブラウンの壁にはひし形の模様がうっすらと入っていた。ボールの形をしたベイシックホワイトの大理石で出来た洗面台。
やはり手洗い場もレストランの内装同様美しく目を奪われるデザインだったが、今の氷室にはどうでも良かった。
氷室は汚くもない手を洗った。
(・・・・・・・・)
胸に重い錘があるようで、すっきりとしない。
南条の言葉や南条の秘書である早乙女のことを思い出すと、胸がわさわさと騒ぎ出す。そんな自分に苛立つ。
そしてふと、目の前に指紋一つない綺麗な鏡に目を向けると、困惑と焦燥をない交ぜにした色を宿した瞳が映っていた。そんな自分に嫌悪する。
(馬鹿馬鹿しい)
こんな感情を抱くなんて、まるで子供だ。
もう終わったことなのに、すんだことなのにくよくよと悩み、恨めしく思っているなんて。
本当は南条の傍で、南条を支えたかった。
氷室の父・南条一彦は、氷室が物心つく頃に病で突然亡くなった。
だがSAKAEモーターの前社長・南条宏道の息子で、SAKAEで働いていた為、貯金はあった。だがだからと言って働かなくてもいいというわけでもない。
母は父の変わりに働いた。しかし、父の突然の死で母は心的に余裕がなく弱くなっていた。そして父の死後半年もしないうちに、母は倒れてしまった。命に別状はなかったが、家計は苦しかった。
そんな氷室たちをサポートしてくれたのが、一彦の父・宏道であった。
金銭的にも、心的にもサポートをしてくれた。母が療養しているため、本家に連れてきて可愛がられて育ててくれた。
その本家には現社長であり、従兄弟同士の南条宏隆もいた。南条の父もすでに他界していた所為もあってか、南条は氷室の面倒をよく見てくれた。
父の死後を思い出し泣いた夜も優しく宥め、一緒に寝てくれた。父兄参観の紙が配られ父がいないことに直面し悲しくなっていた時も慰撫してくれ、父兄参観の時南条が参加してくれた。
そんな優しく温かい南条を兄のように慕っていた。
大学まで金銭的サポートをしてくれた南条家には感謝していた。
南条家の人たちのために何か恩返ししたいと思い、なにか出来ないかと考えた結果、SAKAEモーターに入社した。
そして兄のように慕っている南条の傍で仕事を支えたいと思い、秘書になることにきめた。だからと言ってすぐに南条のサポートが出来るなど思っていなかったが、機会があれば、時間が経てば南条は幹部になる、いや社長になるかもしれない、そう思っていたから、秘書になった。
だがそんな思い空しく、社長の南条を近くで支えているのが秘書課と畑違いの営業課だった早乙女優。
それを聞いて、何かが崩れたような音が聞こえたのを今でも覚えている。
南条が社長になるために色々と奔走しているのは何となく知っていたし、南条が社長になると聞いて、間違いなく自分が秘書になるだろうと思っていた。
なのに、畑違いの営業課を秘書に。それが信じられなかった。
百歩譲って営業課の後輩で信用していたからと言っても、仕事の内容が全く違う営業課の人間用を起用するのは間違っている。
それでも、もう決まってしまったのだから仕方がなかった。
そう思っても、やはり近くで南条をサポートしたかった。
南条の傍にいなくても、SAKAEで働けばSAKAEのためになると分かっていても、南条の秘書として働きたかった。
その感情が、先程の南条の言葉を聞いてふつふつとわいてきた。
秘書課にいる早乙女のことを思い出すと、危うい衝動が身を焦がす。
氷室は大きなため息をついて、気持ちを落ち着かせる。
(もう終わったことだ。別にうだうだ考えることでもないだろ)
そう自分に言い聞かせるが、すっきりしない。
それでも必死に心に蓋をして、平然を繕う。
鏡に映る己の顔は普段と変らないクールな表情だった。
それを確認して、手洗い場を出て、二人がいる席に向かって歩いた。
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2009.11.01 (Sun)
匂艶―9―
ホテルの最上階にあるイタリアンレストランから見える煌びやかな夜景。騒がしい騒音など全く聞こえず、中央に置かれたピアノから美しい音色が聞こえるだけだった。それをBGMに、世界で名高い料理長が腕を振るった料理を食す。
周りには有名な企業から政治家、芸能人など様々なVIPがいたが、そんな雰囲気に全く負けない上品さや優雅さ、そして高雅を南条宏隆は持っていた。
ナイフとフォークを持ち優美にイタリアン料理を食する姿も様になっていて絵になる。
まぁ伊勢谷もレストランの雰囲気に馴染んではいたが、南条の方が何倍も素敵であったし、それ以前に伊勢谷など眼中になかった。
久々に南条と仕事以外で会うことが出来て嬉しかった。
伊勢谷がいなければ良かったのに、と思ってしまったが、それは胸に仕舞い込んだ。
南条は、慣れた手つきで和牛ロース肉をナイフで切り、フォークでそれを口に入れ咀嚼するとナプキンで口を拭く。
そして口を緩め、話を始める。
「専務の仕事はどう? 慣れたかい?」
伊勢谷は手に持っていたナイフとフォークを置き、質問に答えた。
氷室は黙って二人の話を聞いていた。
「氷室くんのフォローでなんとか頑張っています」
「そんな謙虚にならなくていいよ」
伊勢谷の言葉に、南条は形の良い唇を緩め無邪気に笑った。
「氷室くんが君のことを仕事が出来るって褒めていたよ」
「へー、そうなんですか」
南条の言葉に氷室は、ドキッとしながらも表情として出さない。
そんな氷室の表情を探るかのように、笑いながら見つめる。その視線をものともせず、ナプキンで口を拭いた。
「君を本社に連れてきて正解だったよ」
「有難うございます」
嬉しそうに笑う南条につられるように、伊勢谷も笑う。
そして次に伊勢谷が南条に向かって話をし始めた。
「それより、社長の方が凄いですよ。社長が就任してから利益が右肩上がりじゃないですか。それに前より社の雰囲気が良くなっていますし。これも社長の力ですね」
南条を称賛する言葉の数々だが、それが大げさに聞こえないのが、全て本当だから。
SAKAEは昔の古い体制が根付き、年功序列や男女不平等などがあり、若い人間の意見や女性の意見が反映されにくかった。それに二つの大きな派閥が存在し内部は不安定であった。そんな社をかえたのが、南条であった。
元々南条の祖父はSAKAEの社長であったが、七光りや贔屓目されることを嫌い隠し社員としてSAKAEで働いていた。だが祖父が倒れ、社長の席が空白になった時に南条がSAKAEの株式の70%を取得し、社長になった。
そして苦労をしながら、五年をかけて社を改めなおした。
「そんなことはないよ。社のみんなが頑張ってくれたからだ。私の力なんかじゃない」
それなのに、それを自分だけの手腕だけだといわず、気さくで謙虚にする南条。そんな南条だから社員皆ついてくるのだ。
そんな南条を氷室も慕っていた。
「君にも我社のために頑張って貰うよ。これからも宜しく」
「社のために粉骨する所存です」
伊勢谷は強い意志を孕んだ瞳で南条を見つめ、口元を緩め笑う。
そんな伊勢谷を見て南条もまた楽しみだといわんばかりに、笑う。
そして他愛のない会話をしながら、食事を楽しんでいた。
「・・・・ところで、社長の秘書って元々営業課の人間だったんですよね?」
「・・そうだよ」
伊勢谷の質問に一拍遅れ、表情が少し強張った。だがそんな小さな反応に気づいているのは氷室だけだった。その気づいたのは、氷室もまたその質問に反応し、思わず南条を見てしまったからだ。
「秘書にした理由を聞いてもいいですか?」
そんなことに気づかない伊勢谷はその話を続けた。
南条の口元は笑っていたが、表情はどこか硬かった。そして南条は戸惑いながらチラッと氷室の方に視線を向けた。氷室はそれに気づきながらも、氷室は知らんふりをした。
平然を装っていたが、内心心臓の辺りが重かった。本当は理由など聞きたくない。
出来ることなら席を外したかった。だがそんなことできるはずもなく、すました顔で座っていた。
南条は氷室のそんな心中を悟ったようだったが、困惑を唇に浮かべゆっくりと言葉を紡いだ。
「・・・・仕事のサポートというより心の支えが欲しかったんだ。あの時は周りに敵が多すぎたから、一人でも多く信頼している人間が傍にいて欲しかった・・・・っていうのが建前だけど、はっきり言って理由はよく分からないんだ。早乙女が傍にいれば私は頑張れる気がした、それだけだ」
最初は遠慮するように言葉を選んでいたが、次第に熱がこもり始めたことに氷室は気づいていた。 胸の辺りに灰色の煙が渦巻く。それでも氷室の表情は変らない。
「信頼しているんですね」
「しているよ」
伊勢谷の言葉にきっぱりと答える南条。
その言葉に、胸が冷たくなっていく。そんな自分に内心苦笑する。
早乙女を信頼していることが見て取れる。何だか無性に胃が熱くなる。この感情がどういうものか知っていながらも、氷室は無視をし続ける。
この雰囲気に居たくない。少しでいいから、席を外したい。
そう思っていると、氷室の内ポケットにあった携帯電話が着信を知らせる。
ナイスタイミング。
「少し、失礼します」
氷室は着信主を見ないまま、携帯電話を手にして、席を立った。
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2009.10.30 (Fri)
匂艶―8―
「本日は9時に社内の幹部会議が終わりましたら、12時に楡崎重工業の常務と会食。会食が終わりましたら、社に戻り雑務をこなして貰います」
氷室はスケジュール帳を開き今日の日程を淡々とした口調で、目の前にいる伊勢谷に話す。
そしてスケジュールを閉じると、氷室は伊勢谷に強く言った。
「明日の夜は社長とお食事があることを忘れないで下さい」
「覚えているから、大丈夫」
社長である南条と明日プライベートで食事をすることは前々から決まっていて、それを忘れぬよう毎日言っていた。社長との食事を忘れられてたたまったものじゃないからだ。
それでも毎日聞かされる伊勢谷にしてみたら耳にタコ、十分すぎる聞いた台詞にうんざりする。それをあらわしたように苦笑し、嫌気を孕んだ瞳を見せる。
「では、私は秘書課にいますので何かあればご連絡ください」
それでも氷室には関係ない。伊勢谷のご機嫌とりより、南条の約束のほうが何百倍も大事なのだから。
氷室は会釈をすると、その場を去ろうとすると、「氷室くん」と名を呼ばれ足を止めた。
「何でしょうか?」
まだ何かあるのか、そう思って伊勢谷の顔を見ると、伊勢谷は先程の表情と一転し無表情な表情なのに気づいた。それに雰囲気が何だか冷たい。
氷室は怪訝そうに少しばかり眉を顰めた。
「君、昨夜何をしていた?」
「何故そんなことを答えなくてはいけないのですか?」
伊勢谷の突然の問いに柳眉を顰める。
唐突の質問に若干驚いたが、それ以上に不快の感情が抜きん出た。
何故そんなことを答えなくてはいけないのだ。いちいち社員のプライベートまで把握しないと気がすまないのか。
「疑問を疑問で返すなんてフェアじゃないな」
プライベートを詮索するような質問はフェアなのか、と問いたくなったが、そんなことを聞いて話をごちゃごちゃにしたくない。面倒だ。
焦燥と嫌悪が綯い交ぜになりながらも、それを表情に出さずスケジュールを話す時と同じ声音で答えた。
「帰宅してずっと自宅にいました」
嘘だ。
本当は、昨夜佐久間と一緒だった。
だがそれを馬鹿正直に答えるつもりは毛頭ない。
別に疚しいことをしているなんて思っていない氷室は焦りを表情として出すことはなかった。
そんな氷室の機微を探るかのように伊勢谷はじっと氷室を見つめる。
「一人寂しく?」
「ええ」
探るような質問。
「だったら俺を呼んでくれたらよかったのに。丁度俺も寂しく夜を過ごしたんだ」
「そうですか、ゆっくりできて良かったですね」
氷室はにこっりと笑う。
まだ氷室の答えに信用していないようだったが、そんなこと気にしないで話を切り上げ、部屋を出た。
何か言いたげな伊勢谷の視線など関係なかった。これ以上あの場にいたら億劫や悪感情を抱くだけだ。馬鹿馬鹿しい。
(どうしてあんなことを言ってきたんだ)
氷室は専務室から出ると、秘書課に向かって歩いていた。
あの男はいちいち社員のプライベートに干渉してくるのだ。伊勢谷と仕事をし始めて何度も夜の誘いを受けたが、一度たりともプライベートなど探ることはしなかった。
なのに何故今日詮索するようなことを聞いてきたのだ。
何を考えているのだ、あの男。
すると、一瞬悪い予感が電流のように流れた。
だがすぐにそれは消え、氷室は首を振り笑って否定した。
(・・・まさか、な・・・・・)
枕営業のことがばれているのかと思ってしまったが、それはきっとない。
すると、内ポケットに入っていた携帯電話の固定音が鳴る。
氷室は急いで携帯電話を取り、ディスプレイに表示されている電話の主を見る。それを見て思わず不快感を抱くが、出ないわけにはいかず、氷室は電話を取る。
『・・・・私だ』
「ご無沙汰しています」
しゃがれた声に軽く鳥肌が立つが、氷室は全くそれを声音に出さなかった。
『可愛い君に会えなくて寂しかったよ』
「私も久遠さんにお会いしたいです。それで今日はどうしたんですか?」
久遠謙蔵。その男も氷室と身体の関係のある男の一人であった。
久遠は国内でも有数な帝元銀行の常務。帝元銀行はSAKAEの金を工面してくれたり、相談に乗ってくれる大事な企業である。
そうだと言っても、氷室は久遠のことを嫌っていた。いや、嫌っていたというより、気持ち悪がっていた。
久遠は何やら氷室のことを本気で気に入っているらしく、最低で二週間に一度は誘ってくる。国内でも三本指に入るであろう帝元銀行の常務が、だ。
本来ならそれは嬉しいことだが、あまりにも久遠が氷室にベタベタとしてきて、求めてくるので気持ち悪がっていた。
それにセックスも何だかねちっこいわりには、下手糞。もう一つ言えば、容姿が最悪。薄らハゲで三段バラのチビデブ。それがなければセックスなんてするものか。
『明後日の夜、君あいているかい?』
やはり、夜の誘いだった。
「明後日は用事があって無理です。明々後日ならあいていますが・・・」
『それは彼氏とデートかい』
ニタニタと下品に笑う男の詮索するような口調の端々には、嫉妬のようなものを感じた。
気持ち悪い。
「そんな人はいませんよ。明後日は社の者と食事があるんです」
だがそんな感情を声に乗せることなく、どこか甘ったるいような声音で久遠を宥める。
氷室の言葉を信じたのか、久遠はクククッと気色悪い笑いをする。
『まぁ、いいさ。あ、明々後日だったね・・・私は大丈夫だ』
「では明々後日に」
『君と会えるのを楽しみにしているよ。可愛がってあげるからな』
そう言って通話が切れた。
気持ち悪い。最後の台詞にゾッとして、背筋が冷たくなった。
出来ることならあのチビデブハゲの顔面を靴で踏んでしまいたい。
そんな男でも、かろうじてコネと金と地位がある。だから付き合う。
まぁせいぜい利用させてもらう。
氷室は携帯電話を内ポケットに戻し、うすっらと笑みを浮かべる。
そして大きく息を吸い、仕事モードに切り替えた。
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氷室はスケジュール帳を開き今日の日程を淡々とした口調で、目の前にいる伊勢谷に話す。
そしてスケジュールを閉じると、氷室は伊勢谷に強く言った。
「明日の夜は社長とお食事があることを忘れないで下さい」
「覚えているから、大丈夫」
社長である南条と明日プライベートで食事をすることは前々から決まっていて、それを忘れぬよう毎日言っていた。社長との食事を忘れられてたたまったものじゃないからだ。
それでも毎日聞かされる伊勢谷にしてみたら耳にタコ、十分すぎる聞いた台詞にうんざりする。それをあらわしたように苦笑し、嫌気を孕んだ瞳を見せる。
「では、私は秘書課にいますので何かあればご連絡ください」
それでも氷室には関係ない。伊勢谷のご機嫌とりより、南条の約束のほうが何百倍も大事なのだから。
氷室は会釈をすると、その場を去ろうとすると、「氷室くん」と名を呼ばれ足を止めた。
「何でしょうか?」
まだ何かあるのか、そう思って伊勢谷の顔を見ると、伊勢谷は先程の表情と一転し無表情な表情なのに気づいた。それに雰囲気が何だか冷たい。
氷室は怪訝そうに少しばかり眉を顰めた。
「君、昨夜何をしていた?」
「何故そんなことを答えなくてはいけないのですか?」
伊勢谷の突然の問いに柳眉を顰める。
唐突の質問に若干驚いたが、それ以上に不快の感情が抜きん出た。
何故そんなことを答えなくてはいけないのだ。いちいち社員のプライベートまで把握しないと気がすまないのか。
「疑問を疑問で返すなんてフェアじゃないな」
プライベートを詮索するような質問はフェアなのか、と問いたくなったが、そんなことを聞いて話をごちゃごちゃにしたくない。面倒だ。
焦燥と嫌悪が綯い交ぜになりながらも、それを表情に出さずスケジュールを話す時と同じ声音で答えた。
「帰宅してずっと自宅にいました」
嘘だ。
本当は、昨夜佐久間と一緒だった。
だがそれを馬鹿正直に答えるつもりは毛頭ない。
別に疚しいことをしているなんて思っていない氷室は焦りを表情として出すことはなかった。
そんな氷室の機微を探るかのように伊勢谷はじっと氷室を見つめる。
「一人寂しく?」
「ええ」
探るような質問。
「だったら俺を呼んでくれたらよかったのに。丁度俺も寂しく夜を過ごしたんだ」
「そうですか、ゆっくりできて良かったですね」
氷室はにこっりと笑う。
まだ氷室の答えに信用していないようだったが、そんなこと気にしないで話を切り上げ、部屋を出た。
何か言いたげな伊勢谷の視線など関係なかった。これ以上あの場にいたら億劫や悪感情を抱くだけだ。馬鹿馬鹿しい。
(どうしてあんなことを言ってきたんだ)
氷室は専務室から出ると、秘書課に向かって歩いていた。
あの男はいちいち社員のプライベートに干渉してくるのだ。伊勢谷と仕事をし始めて何度も夜の誘いを受けたが、一度たりともプライベートなど探ることはしなかった。
なのに何故今日詮索するようなことを聞いてきたのだ。
何を考えているのだ、あの男。
すると、一瞬悪い予感が電流のように流れた。
だがすぐにそれは消え、氷室は首を振り笑って否定した。
(・・・まさか、な・・・・・)
枕営業のことがばれているのかと思ってしまったが、それはきっとない。
すると、内ポケットに入っていた携帯電話の固定音が鳴る。
氷室は急いで携帯電話を取り、ディスプレイに表示されている電話の主を見る。それを見て思わず不快感を抱くが、出ないわけにはいかず、氷室は電話を取る。
『・・・・私だ』
「ご無沙汰しています」
しゃがれた声に軽く鳥肌が立つが、氷室は全くそれを声音に出さなかった。
『可愛い君に会えなくて寂しかったよ』
「私も久遠さんにお会いしたいです。それで今日はどうしたんですか?」
久遠謙蔵。その男も氷室と身体の関係のある男の一人であった。
久遠は国内でも有数な帝元銀行の常務。帝元銀行はSAKAEの金を工面してくれたり、相談に乗ってくれる大事な企業である。
そうだと言っても、氷室は久遠のことを嫌っていた。いや、嫌っていたというより、気持ち悪がっていた。
久遠は何やら氷室のことを本気で気に入っているらしく、最低で二週間に一度は誘ってくる。国内でも三本指に入るであろう帝元銀行の常務が、だ。
本来ならそれは嬉しいことだが、あまりにも久遠が氷室にベタベタとしてきて、求めてくるので気持ち悪がっていた。
それにセックスも何だかねちっこいわりには、下手糞。もう一つ言えば、容姿が最悪。薄らハゲで三段バラのチビデブ。それがなければセックスなんてするものか。
『明後日の夜、君あいているかい?』
やはり、夜の誘いだった。
「明後日は用事があって無理です。明々後日ならあいていますが・・・」
『それは彼氏とデートかい』
ニタニタと下品に笑う男の詮索するような口調の端々には、嫉妬のようなものを感じた。
気持ち悪い。
「そんな人はいませんよ。明後日は社の者と食事があるんです」
だがそんな感情を声に乗せることなく、どこか甘ったるいような声音で久遠を宥める。
氷室の言葉を信じたのか、久遠はクククッと気色悪い笑いをする。
『まぁ、いいさ。あ、明々後日だったね・・・私は大丈夫だ』
「では明々後日に」
『君と会えるのを楽しみにしているよ。可愛がってあげるからな』
そう言って通話が切れた。
気持ち悪い。最後の台詞にゾッとして、背筋が冷たくなった。
出来ることならあのチビデブハゲの顔面を靴で踏んでしまいたい。
そんな男でも、かろうじてコネと金と地位がある。だから付き合う。
まぁせいぜい利用させてもらう。
氷室は携帯電話を内ポケットに戻し、うすっらと笑みを浮かべる。
そして大きく息を吸い、仕事モードに切り替えた。
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