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2016.04.08 (Fri)

あなたを待っています-17-


 井草は目を覚ます。
 いつの間にかリビングにある三人掛け用のソファーで寝ていた事に気づいた。あれから淡雪を看病して、一休みをしようとしたらそのまま寝たらしい。
 大きく作られた窓のカーテンの隙間から朝日が差し込む。井草は腕時計を見ると昼前になっていた。
 井草は音をたてないように淡雪が寝ている部屋のドアを開けると、淡雪は静かに寝ていた。
 眠っている淡雪の額に張った冷却シートをとり、手を置く。ほんのり熱いが、最初よりは下がっている。ほっと胸を撫で下ろす。
そして淡雪の額に冷却シートを張った時に、ぴぴっという機械音が鳴る。寝ている淡雪を起こしてしまう音に驚き慌てて探すと、その音は淡雪が持っていた鞄からだった。悪いと思いながらも鞄を開け、中を見た。携帯電話が着信を知らせる音だった。ディスプレイには「社長」と表示され、びくりとした。社長と言う事は事務所のトップ。そんな人がわざわざ電話しているのだから取らなくては失礼だ。だが淡雪は寝ている。だったら無視しようか、そんな事を考えたが着信を知らせる音の重圧に耐えきれず結局出てしまった。

『……早く出てよ、待たさないでくれる』
「すいません……っ」
 開口一番に聞こえる電話越の焦慮宿る女性の声に思わず謝ってしまった。
 それを不審に思ったのか、不穏な空気が伝わる。

『……――誰?』
 怪訝に問いかける声は凛としているためなのか少しキツイ印象を与える。その声に威圧感を感じながらも答える。
「……サークルの先輩です……。淡雪は熱が出ていて看病していました……」
『看病……。……で、下がったの?』
「きちんと計っていませんが下がってはいると思います……」
 責められるような言い方にビクつきながら答える。携帯電話を握る手に力が入る。
『じゃあ起こして』
「えっ!? い、いや、でも……っ」
 平然した電話の相手に井草は焦った。
 下がったと言ってもまだ万全じゃない。そんな体調が万全ではない相手を起こすなど出来ない。
 そんな井草の気持ちなど全く汲まない相手は、はーっと大仰に溜め息を付いた。
『大事な仕事なの、休まれたら困るの。穴が出来て発生した不利益を貴方が補填してくれるの?』
「……それは……」
 相手の言葉に言葉を詰まらせる。困惑に目を泳がせる。
 黙り込む井草に相手がふっと笑った。
『出来ないでしょ、だったら黙っていて。マネージャーがあと三十分で着くはずだから起こして準備するように言って』
「いや、でも――」
「行きます」
 突然握っていた携帯電話を奪われたと思ったら、そこには淡雪が立っていた。
 淡雪の声に電話の相手は、「あら、起きていたの」と淡々と言った。
『仕事の確認で昨日マネージャーから連絡来ていたのに無視したでしょ? でも貴方は仕事に真面目だから返信が無くても大丈夫だろうって今日何度か連絡しても電話に取らないって言うから焦って私に連絡してきたのよ。もう迷惑千万よ。今後は気を付けなさい』
「すいません」
『ほら、さっさと支度して。三十分くらいでマネージャー来るから』
「分かりました」
 淡雪は頷くと、電話を切った。すると淡雪はごほっと何度か咳をした。
 それを見て井草は眉を顰めて噛みついた。
「行くのかよ! まだ完全に熱下がってないぞっ!」
「仕事なんですから仕方がありません」
 淡雪はクローゼットを開き、服を探る。
そんな淡雪の背中を井草は不服そうに見つめる。
「お世話になりました。このお礼は後日させて頂きますから今日のところは帰って下さい」
 背を向けていた淡雪は適当に服を手に取ると、井草を見た。
 昨日よりは生気のある顔をしているが、まだ顔色は良くない。青い瞳は気怠さと疲労が宿る。きっと今もキツイだろう。

「嫌だ、俺も行く」
 淡雪をじっと見つめた。

 体調の悪い淡雪をそのまま仕事へ見送る事は出来ない。
「何言っているんですか、正気ですか」
「正気だっ、どっちかと言うとお前が、いや、社長が正気じゃない! 体調が悪いのに……」
 ぼそぼそと呟くと、淡雪は変な物を見るかのような視線を向けながら溜め息を付いた。
「貴方は他人を心配しすぎです……」
 呆れが交じる声はぼそりと発すると、淡雪は額に張った冷却シートを剥がした。
「……まあ良いです。邪魔にならなければつい来ても良いと思います」
 そう言って淡雪は服を持って部屋を出て行った。
 多分ベタついた汗を流すために風呂に入るのだろう。だが体調がしっかりとしない中で風呂に入るのはどうかと思ったが、仕事があるなら仕方がないのかと一人納得した。

 (それより準備しようっ)
 まだ体調の悪い淡雪のために薬とスポーツドリンクとタオルなどを用意しようと思った。いくら性格の悪い淡雪でも一応後輩なのだから面倒を見なければいけない。それに病み上がりとなればより心配だ。
 井草は急いで準備を始めた。
 そして風呂から上がった淡雪は白いワイシャツにグレーの薄いカーディガンとデニム姿で部屋に戻って来た。風呂上りで少し濡れたサンディブロンドと赤らんだ頬。先程より顔色は良い。
「……コンタクトしたんだな」
「ええ」
 青かった瞳は黒くなっていた。それを名残惜しいと思ったが、それを言ってしまうのは何か恥ずかしい事のような気がしてやめた。
 淡雪は必要な物を鞄に入れる。それを井草は盗み見る。
 本当に仕事が出来るのだろうか。身体を酷使してまでやらないといけないのだろうか。
 井草は複雑な気持ちで淡雪を見つめていると、ピーンポンとインターホンが鳴った。
「行きますよ」
 そう短く言う淡雪は鞄を持って部屋を出た。井草も慌てて淡雪について行った。




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