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2016.04.18 (Mon)

あなたを待っています-23-



 そして意気揚々と入ろうとした時、スタッフに五人以上は入れないと言われたので、ジャンケンでグループを別けようとした。だが何故か井草だけが一人残る形になってしまう。何度やっても、何度やっても井草だけが一人になる。
「あーっ! もう面倒だっ! 井草一人で入れっ!」
 何度やっても同じようにしかならない状況に痺れを切らした牧港と同じ学年の先輩が苛立った。
「何でですか! ヒドイですよっ! 一人は寂しいですっ!」
「何十回やっても一人って事は一人で入れって事だろっ、神様からのお告げだろ」
 そう言うと周りにいたメンバーも激しく同意する。メンバーはもうこれ以上グループを均等に分けようとするのは無理だと悟った。
 それを見て井草は叫んだ。
「お告げだったとしても、一人は可哀そうだから井草と一緒に回ってやるよっていう人はいないんですか! 優しい牧港さんは俺と回ってくれますよね?」
「回る……、と言いたいところだが、こんなにも一人で残る結果になったんだから、逆に一緒になったらダメな気がする」
「何ですかそれ!」
 活動に関して熱が入りすぎる節があるが普段は優しい牧港に声を掛けるが、牧港はぼそりと拒否した。それに井草は唇を尖らせるも、周りは意見を止められなかった。
「とりあえずお前は一人って事で!」
「じゃあな」
 井草を残して全てのメンバーはアトラクションに入って行った。

 本当に一人にされてしまった。
 寂しく風が吹く。
 取り残された井草を見ていたアトラクションのスタッフは哀れに見つめるも、一人にされた寂しさに打ちひしがれる井草は気づかなかった。
 そして五分して、中に入るように指示されたので、中に入るとそこは真っ暗だった。一瞬緊張でドキリと跳ねたが、すぐに頭上から怪しいBGMが流れている事に気づき安堵した。井草は壁に手を置きながらゆっくりと歩く。
 入った時は真っ暗に見えたが、よく見ると天井には星型の夜行シールのようなものが張られていて、綺麗に光る。だがそれを綺麗だと思う余裕はなかった。

「おーい」
 井草は先に入ったメンバーに向かって声をかけた。
 五分前に入ったのだからそこまで遠くへ行っていないだろう。

「誰かいないのかー?」
 井草の声が暗い空間に消える。
 『迷宮の館』は出口を見つけ出す事が難しいと噂であった。それは迷路が難しいというのもあるが、一番は室内が薄暗いという事だった。視界が暗く、必要最低限の視界しか確保できない為、道を確認する事が困難であった。
 その噂を聞いていたから少し焦っていた。一生出られないという事はないだろうが、それでも一人暗い空間に取り残されるのは恐怖だ。だが唯一助かったのは、音がある事だった。今にも幽霊が出てきそうなおどろおどろしいBGMを聞きながら歩む。
 己の足音が響く。先の道が見えない。闇が続く。

 (……大丈夫だ……。音はある……)
 室内のBGMと自分の足音が響く。それを確かめながらゆっくりと歩く。

 (いざとなればポケットにウォークマンが入っている……)
 井草はパーカーのポケットに手を伸ばす。
 だがそこには予想していた感触はなかった。
「……うそ、だろ――……」
 井草は一気に駆け上がる焦燥と不安を必死に振り払いながら探す。だがいくら探してもそこには何もなかった。
 目の前が真っ暗になった。
 薄暗い視界の中に見えた道が見えなくなった。
 足元が覚束ず、その場で崩れ落ちた。
 そこに地面がある筈なのに、底の見えない沼に沈んでいくような感覚に陥った。落ちる。沈む。
 音が遠くなる。
 足元を微かに照らしていた光が見えない。

(……いや、本当に、ないんだ――……)
 音も、光も。
 緊張や恐怖で感覚が遠くなったわけではない。必死に感覚を鋭くしてもないのだ。
 故障かも知れない。だがそれを知る術はない。
 暗闇が身体を覆う。押し潰す。
 息が出来ない。
 苦しい。

 (……誰か、助けて欲しい――……っ)
 叫びたいが声が出ない。
 怖い。怖い。怖い。
 身体が震える。指先が冷たい。
 薄れゆく意識の中で小さな声が聞こえた。必死に息を殺して一人見えぬ恐怖に耐える声が。
 そして暗闇の中でうずくまる一人の男の子がいた。
 溢れる涙を堪えて、乱れる呼吸を抑えて毛布にうずくまる。

 (……あ――…………)
 ぼんやりとした意識の中で思い出した。
 自分だと。
 両親は共働きで小さい頃からずっと一人だった。
 熱を出した時もいつも一人だった。心細くて、悲しくて、怖くてたまらなかった。でもそれを仕事で忙しい両親に告げるのは憚れて一人で耐えていた。色も、音も、匂いも、覆うような暗闇が襲い怖かった。熱で鋭くなった感覚にはたまらなく怖かった。
それから一人の夜が怖くなった。

(――…………)

 意識がゆっくりと泥沼に落ちて行く。そんな中で太陽に綺麗に輝くサンディブロンドを思い出した。




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