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2008.12.02 (Tue)

秘する私情−9−

 
 南条の携帯電話が鳴り、電話を取るために座席を立つ南条を目で追いながら、不安と恐怖が早乙女を襲う。
 せっかく手洗いに行くという名目で、自分を落ち着かせるために席を立ち気合いを入れて戻ってきたのに、席に帰ってくるなり名取と二人にならないといけないというアクシデントは予想外だった。気持ちを落ち着けさせても、こんな想定外の事を頭でシュミレーションしていないため、耐えられる自信が全くない。
 その所為で、南条の不安そうな視線など全く気付かず、一体南条が戻ってくるまでどう対処すればいいのか、名取に何を言われるのかという不安や焦りで頭がいっぱいだった。

 (気持ちを整理したはずなのに・・・・っ)
 なのに、心はこんなにも焦り戸惑っている。


 トイレにある洗面所の蛇口を捻り水を出すと、眼鏡を外し顔を洗った。冷たい水は不安で焦っていた気持ちを少し引き締めて気持ちが良かった。
 しかしだからといって心が落ち着くわけではなかった。
 あれから時間が経っているにもかかわらず、名取を見ると動揺してしまう。
 鏡に映る不安や恐怖、戸惑いの色を含んだ黒色の瞳が揺らぎ、普段繕っている表情が崩れているのが、いい証拠。
 独特の甘さを孕んだ低い声音で言われた罵倒の言葉が、頭で反復される。思い出したくなくて、無かったことにしたくて奥深くにしまい込んだ筈の記憶が甦ってくる。
 早乙女はズボンのポケットに入っていたハンカチを取り出し顔を拭くと、眼鏡をかけ、鏡を見た。

 最近、セクシュアルな話しや話題をよく耳にして、心が焦り戸惑い揺れていた。
 気にしないと心の中で言っても、南条が焦る必要がないと言っても、心のどこかで戸惑っているに違いない。だから、無意識にセクシュアル的な話題や話しに反応し、知らないうちに耳を傾け入っていたのかもしれない。
 その所為でもっとあたふたして、苦しんでいた。悪循環。

 そんな不安定な時に、名取と出会ってしまった。
 自分はタイミングが悪く、運のない人間だと実感しているがここまで不運だと苛立ちや憤慨を通り越して、笑いが出てきてしまう。
 早乙女は首を振り、頬を叩き活を入れた。

 (大丈夫。そんなに長くは一緒にいないはずだから、大丈夫だ)
 目を閉じ深呼吸をすると、そう自分自身を励ました。
 いつものように自分自身を取り繕って、平然と、クールに取り繕えばいい。感情を隠し、殺し我慢して、時間が過ぎるのを待てばいい。
 なのに、そう自分自身を励まし、帰ってきたはずなのに、

 名取といきなり、二人っきりというシチュエーションはその自身を粉々してしまい、心が動揺し感情が揺らいでしまう。
 目の前の名取は綺麗な箸使いで天ぷらを美味しそうに食べていた。
 早乙女はそんな名取を見ないで、じっとテーブルに置いてある水の入ったグラスを見ていた。
 ドキっドキっ、と速く大きい動悸が聞こえる。
 二人っきりの時に、名取の顔なんて見られるはずがない。今も凄いぐらい緊張と恐怖で動悸が速いというのに、顔を見てしまったら身体が硬直して冷や汗がどっと噴き出すに違いない。
 そんな緊張した早乙女に優しい笑みを浮かべ、名取は話しかけてきた。

「この店はよく来るの?」
 当たり障りのない話しに少し驚きながらも、ほっとした早乙女は、眼鏡のブリッジを上げ答えた。
「・・・あ、いえ、初めてです。社長が、教えて貰った店だと言っていました」
「ふぅ〜ん、そう・・・」
 その言葉に名取は頷きながら、一瞬表情を曇らせ思慮したように見えたがすぐに一転して、いつもの人の気持ちを見抜きそうな瞳を細め笑う。

「ところで、宏兄とは上手くいってるの?」

「・・・っ、・・・・」
 いきなり話を変えられて、息が詰まるかと思った。突然のことで、繕っていた仮面が一瞬外れそうになり、思わず動転した表情を名取に見せるところだった。

 (何故、知ってるんだ・・・・?)
 早乙女は焦った気持ちを隠しながら、考慮した。
 南条がもしかして名取に話していたのかもしれない。だが、もし名取に話していたとしても今の現状や関係がどうなっているのかなど、親しくもない名取にも言いたくもないし、一種のトラウマのようなものを植え付けられた張本人である、名取に言う筈など無かった。名取の所為で、現在心が焦り戸惑いとても不安定なのだ。だから尚更、弱みなど見せたくないし、言いたくはなかった。

「貴方には関係、ありません」
 きりっと睨み付け、これ以上の話しをするなと言うかのように言い放った。
「まぁ、そんなに怒らないでよ」
 そんな冷たく突き放すような態度にも怖じ気づくことなく、箸を持っていない左の手先を上下に動かしながら屈託のない笑みで浮かべた。
 その笑顔に何だか無性に腹が立ち、少しむっとする。
 そんな若干の早乙女の歪む表情を見抜いてか、くすっとほくそ笑んだ名取は、箸を置いた。



テーマ : 自作BL小説 ジャンル : 小説・文学

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*Comment

■耐えて頑張れ早乙女

前話の感想込みに書いちゃいますが、名取はヘテロだったのには驚きました。でも、初恋は・・秀樹に対してだけ恋愛感情が沸くのであれば、ある意味、すごく強い愛ですよね。
だとしても、名取が早乙女にしたことは許せませんが(○`ε´○)
しかも、南条にバラしちゃったしっ!!
でも、そんなことがあったと知らずに戻ってきたら、いきなり名取と二人になっちゃった早乙女はキツイ。
今のところ、平穏っぽく装ってるけど、次に名取が何をいうのやら・・
ドキドキ
くろきち |  2008.12.03(水) 14:16 |  URL |  【コメント編集】

■いらっしゃいませ\^w^/〜♪

こんにちは〜♪くろきちさま\^O^/ww

名取はノーマルですよ!うん、意外(?)ですがノーマル!
ってか、性のモラルや性格が歪んでいる性で別に異性愛とか同性愛とか、そんなの関係ねぇー!です←あ
名取には増永だけなので!^∞^笑

南条にばれて、これからちょいと波乱の予感です!そして二人っきりになった早乙女と名取の所でも少し波が訪れます!そしてその二つ波が衝突して、大きな波乱になってしますのです←意味不明
次回は、早乙女を揺さぶる名取と、それに頑張って耐える早乙女のターンです!^^

書き込み有り難うございました♪

まじきみ |  2008.12.03(水) 23:41 |  URL |  【コメント編集】

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